「タナックスのワイヤーロックは“旅の保険”になるのか?」軽装ツーリング派が語るリアルな実用性

はじめに

ツーリングシーズンになると、サービスエリアの駐車場でふと不安になりませんか。「このままシートバッグ置いてトイレ行って大丈夫かな……」って。バイクは身軽さが魅力なのに、荷物を積んだ瞬間から“守るべきもの”が一気に増える時代です。キャンプ道具、高価なウェア、ガジェット類。物価も治安も「自己防衛してくださいね」という空気が濃くなってきた今、バッグの盗難対策は、もはや“こだわり”ではなく“前提条件”になりつつあります。

そんな流れの中で登場したのが、タナックスの「車載バッグ専用ワイヤーロック」。シートバッグやモトフィズ系のツーリングバッグを、グラブバーやフレームにワイヤーでつなぎ、さらにファスナー部分までまとめてロックしてしまおう、という発想のアイテムです。ストレートタイプとコイルタイプの2種類が用意され、カラーもブラック/レッド/イエローと、視認性とデザイン性のバランスを取ったラインナップ。価格帯も、ツーリングの“保険料”として現実的なところに落ち着いています。

ここで、一度このワイヤーロックの良いところ・気になるところを整理してみます。

 

メリット

まず、良い点を3つ。

1つ目は、「盗りづらくする力」が高いこと。バッグを車体にワイヤーで固定しつつ、ファスナーのロック穴ごとまとめて施錠できる構造なので、「バッグごと持っていく」「ファスナーだけ開けて中身を抜く」という両方のパターンに対して、心理的なハードルをしっかり上げてくれます。

2つ目は、ダイヤル式で鍵いらずなところ。ツーリング中に小さな鍵を管理するのは地味にストレスですが、これは暗証番号方式なので「鍵どこやったっけ?」という不安から解放されます。番号の再設定もできる仕様なので、運用の自由度も高めです。

3つ目は、専用設計ならではの使い勝手。モトフィズロックポケット対応のバッグなら、ポケット内のDリングにワイヤーを通してスマートに内蔵でき、見た目もスッキリ。ストレートタイプは1200mmのワイヤー長で取り回しやすく、コイルタイプはサッと伸ばしてサッと仕舞える“素早さ重視”のキャラクターです。

 

デメリット

一方で、気になる点も3つ挙げておきます。

1つ目は、「絶対に盗まれない」わけではないこと。これはこの製品に限りませんが、ワイヤーロックはあくまで「切ろうと思えば切れる」カテゴリの防犯用品です。本格的な工具を持ったプロ相手に、物理的な完全防御を期待するのは現実的ではありません。

2つ目は、対応バッグ前提の設計がベストでもあり、制約でもあること。モトフィズロックポケット対応バッグとの組み合わせでは真価を発揮しますが、そうでないバッグに使う場合は、取り回しや固定方法を自分で工夫する必要が出てきます。「どのバッグにも完璧フィット」という万能感とは少し違う立ち位置です。

3つ目は、運用のひと手間と相性問題。ダイヤルの数字が小さくてグローブ越しには回しづらいと感じる人もいれば、ワイヤーを毎回通す作業を「安心の儀式」と思えるか「ちょっと面倒」と感じるかは、性格や使い方次第。暗証番号を忘れたときの冷や汗も、セットでついてきます。

 

私見

ここまでを踏まえて、このワイヤーロックの“キャラ”を一言で言うなら、「シートバッグ専属のボディーガード」です。屈強なSPというより、真面目でよく働く警備員さんタイプ。

まず、専用設計の安心感が大きい。ファスナーのロック穴に合わせたツル形状や、グラブバーやフレームに通しやすいワイヤー長など、「とりあえず汎用ワイヤーでなんとかするか」とは違う、“ちゃんと考えられている感”が強い。モトフィズロックポケット対応バッグと組み合わせると、ロック本体がバッグに内蔵されて見た目もスッキリするので、「防犯してます!」というゴツさを前面に出したくない人にも向いています。

それでいて、価格はストレートタイプで税込1,760円、コイルタイプで1,980円前後。ツーリング1回分のガソリン代ちょっと+αくらいで、「盗られたら確実に凹む荷物」にワンクッション置けるなら、コスパとしてはかなり健全なラインです。

もちろん、「これさえあれば絶対安心」という魔法のアイテムではありません。ワイヤーは工具があれば切れますし、暗証番号を忘れれば自分が一番困ります。それでも、駐車場でバイクから離れるときに、「何もしていない状態」と「少なくともロックはかけてある状態」の差は、精神衛生的にかなり大きい。

個人的な感覚としては、このワイヤーロックは「泥棒と真っ向勝負する武器」ではなく、「“面倒くさいターゲット”になるための道具」です。盗む側の立場に立って考えると、工具を出してワイヤーを切って、ロックを外して……と手間が増えるだけで、周りには他にも“無防備なバッグ”が並んでいるかもしれない。だったら、わざわざこのロック付きバッグを選ぶ理由は薄くなります。

つまり、「狙われない列」に自分のバッグをそっと移動させるための小さな投資。その役割を、このワイヤーロックはかなり真面目にこなしてくれる印象です。ストレートかコイルかは、じっくり準備するのが好きか、サッと出してサッと仕舞いたいか、性格で選ぶくらいでちょうどいいかもしれません。

 

まとめ

最後に、まとめとしての感想をひと言で言うなら、「安心感を“荷物の一つ”として積み込めるアイテム」です。バイクにトップケースを付けるほどではないけれど、シートバッグで身軽に旅したい人にとって、「盗難リスクをゼロにはできないけれど、ちゃんと気をつけている」と胸を張れる小さな相棒。

ツーリングの荷造りリストに、「着替え・レインウェア・工具・おやつ」と並んで、「ワイヤーロック」を一行足しておく。そんなささやかな一手間が、帰り道の気持ちをだいぶ軽くしてくれるはずです。