ヘルメットを被った瞬間、物語が始まる。RAPIDE-NEO OVERLANDの不思議

はじめに

フルフェイスヘルメットって、今や「安全装備」以上に「スタイルの一部」になってきました。ネオクラシックなバイクが街に増え、SNSには“レトロだけど最新スペック”なギアが並び、ただ守るだけじゃなく「世界観ごと被る」時代になっています。そんな流れのど真ん中にいるのが、アライのネオクラシックフルフェイス、RAPIDE-NEO。その中でも今回は、グラフィックモデルの「OVERLAND(オーバーランド)」に焦点を当てていきます。

1980年代のラパイドを思わせる3本スリットと、ダクトレスの丸い帽体。そこに、アウトドアギアのような配色とラインが乗ったOVERLANDは、「走り」と「旅」と「ミリタリー感」のちょうど真ん中あたりを狙ってきたデザイン。クラシックな空気をまといながら、中身はアライらしい最新の安全性・快適性を詰め込んだ、「見た目はレトロ、中身は令和」のフルフェイスです。

 

メリット3つ

メリット1:レトロだけど“今っぽい”完成された外観

ラパイドネオの特徴である3本スリットと、ダクトのない丸みのある帽体は、80年代ラパイドの意匠を受け継ぎつつ、現代の技術でブラッシュアップされたフォルムになっています。OVERLANDグラフィックは、そのクラシカルなベースに、アウトドアウェアやミリタリーギアを思わせるカラーとラインを重ねたデザインで、ネオクラ系や旧車、スクランブラー、アドベンチャー系にも自然と馴染むルックスです。いかにも「バイク乗りの道具」という雰囲気をまといつつ、街乗りでも写真映えする絶妙なバランスに仕上がっています。

メリット2:アライらしい高い安全性と帽体性能

帽体はPB-cLc2帽体を採用し、衝撃をかわしやすい丸みのある形状と、滑らかな曲面を増やすためのVASシールドシステムを搭載。これにより、スネル規格とJIS規格をクリアする高い安全性を実現しています。また、アライ独自のインナーベンチレーション構造により、外見上はダクトが少ないレトロな顔つきでありながら、走行風の負圧を利用して頭部の熱気を効率的に排出する仕組みになっています。クラシカルな見た目と、レーシングモデルに近い安全性・機能性を両立している点は大きな強みです。

メリット3:快適性とフィット感の作り込み

内装にはハイフィッティング・抗菌・消臭機能を備えた多機能生地が採用され、フェイシャルコンターシステム(FCS)によって頬まわりのフィット感を高めつつ、被り心地とホールド感を両立させています。口元のスリットは、チンガード内側のスイッチで開閉でき、見た目はシンプルなまま換気量を調整可能です。被った瞬間の“アライらしい包まれ感”に加え、長時間走行でもムレや不快感を抑える構造になっていて、見た目だけのヘルメットではないことが伝わってきます。

 

デメリット3つ

デメリット1:高速域での風切り音や空気抵抗の強さ

ラパイドネオは、往年のフルフェイスをイメージした丸みのあるシンプルな形状ゆえに、高速道路などのスピード域では風切り音や空気抵抗がやや大きめに感じられるという意見があります。シャープなエアロフォルムを持つ現代的なスポーツヘルメットと比べると、「絶対的な静粛性」や「空力特化」というよりは、あくまで“ネオクラシックらしい雰囲気を優先したバランス型”の印象になりがちです。

デメリット2:価格帯の高さと入手性

RAPIDE-NEO OVERLANDは、税込で6万円台後半という価格帯で販売されているケースが多く、グラフィックモデルらしいプレミアム価格になっています。フルフェイス全体の市場を見渡すと、同価格帯ならインカム用スペースの配慮やサンバイザー内蔵モデルなど、多機能さを打ち出したヘルメットも多いため、「デザインとブランドに納得できるか」が重要なポイントになります。

デメリット3:用途を選びやすいキャラクター

ネオクラシック色の強いデザインと、レトロ寄りのフォルムは、スポーツツアラーやスーパースポーツなど、シャープなデザインの車両とは好みが分かれやすい傾向があります。また、ダクト類を強調したレーシングヘルメットのような“いかにも速そうな見た目”を求めるライダーにとっては、ややおとなしすぎる、あるいは方向性が違うと感じられる可能性もあります。結果として、「刺さる人には深く刺さるけれど、守備範囲が広い万能ヘルメット」というよりは、「世界観がはっきりしたプロダクト」に属します。

 

私見としての面白がりポイント(良し悪し含めて)

ここからは、あくまで私見としての「RAPIDE-NEO OVERLANDって、どういうヘルメットなのか」という話を、少し噛み砕いてみます。

まず、このヘルメットは完全に「物語を被るタイプ」のギアです。3本スリットのクラシック顔に、オーバーランドという名前。ナチュラルなアースカラーと黒いラインは、バイクで街を走るだけなのに、なぜか「これから大陸横断でもするんですか?」という雰囲気を出してきます。実際は週末のカフェまでのワンマイルライドだとしても、ミラーに映る自分だけは、心の中で国境をいくつも越えているわけです。

中身はというと、アライの誇るPB-cLc2帽体とVASシールド、内蔵ベンチレーション、スネル・JIS規格…と、スペック表だけ見ればかなりガチめの安全装備。でも外見は、あくまで古き良きフルフェイスのシルエットを崩さない。ここに、「あえて盛りすぎない今っぽさ」があります。最新レーサーレプリカヘルメットのように、角とダクトで「速いぞ!」と主張するのではなく、「わかる人だけニヤリとしてくれればいい」という控えめなドヤ感。

一方で、その“丸さ”ゆえの弱点もちゃんと存在します。高速道路での風切り音や空気抵抗は、空力特化系のヘルメットより気になりやすく、静かさ至上主義のツアラーには向かない場面もあるでしょう。それでも、あえてそこを受け入れて使う人は、おそらく「スペックだけじゃない何か」を大事にしているタイプ。データよりも、そのギアを身に着けている自分の姿に納得できるかどうかを優先したくなる、そんな人にしっくり来るキャラクターです。

そして価格。グラフィックモデルらしく、なかなか男前な数字が並びます。ただ、このヘルメットに惹かれる人って、きっと「あと一歩で買う理由がほしいだけ」だったりする。安全性はアライ、デザインはネオクラ系バイクと相性抜群、名前はOVERLAND。最後の一押しは、「鏡に映った自分を見て、ニヤッとできるかどうか」。そう考えると、このヘルメットの本当のスペックは「自分の物語にどれだけ燃料を足してくれるか」かもしれません。

 

まとめとしての感想

RAPIDE-NEO OVERLANDは、スペック表だけ見れば「高性能なネオクラフルフェイス」ですが、実際にはもっと感情寄りのヘルメットだと感じます。レトロな顔つきと、オーバーランドという名前が生み出すストーリー性、そこにアライの安全性と快適性がしっかり下支えしているので、「見た目重視」と「性能重視」の間で揺れる心をうまく両側からなだめてくれる存在です。

静粛性や空力だけを求めるなら、他にもっと“数字で選びやすい”ヘルメットはいくらでもあるはず。それでもあえてこのモデルを選ぶとしたら、「バイクに乗る時間そのものを、ちょっとドラマチックにしたいから」という理由がしっくり来ます。通勤路でも街乗りでも、ツーリング先でも、“ただの移動”を少しだけ冒険寄りに変えてくれるギア。RAPIDE-NEO OVERLANDは、そんな「日常と非日常の境界線」に被りたくなるヘルメットだと感じました。