はじめに:ヘルメットも「旅する時代」の相棒へ
ここ数年、バイクの世界って「どこまで行けるか」より「どう楽しむか」にシフトしてきている感じがありますよね。キャンプツーリング、林道ちょいかじり、平日は通勤、週末はロングツーリング──一人のライダーが、いくつもの顔を持つのが当たり前になってきました。
そんな“マルチなライダー”の相棒として、アライの「TOUR-CROSS V(ツアークロスV)」はかなり象徴的な存在です。フルフェイス、アドベンチャー、オフロード、その全部を1つでこなそうとしている、欲張りなヘルメット。
「ヘルメットは用途別に分けるもの」という常識に対して、「いや、1個でよくない?」と真っ向から提案してきたのが、このツアークロスVだと感じています。

- はじめに:ヘルメットも「旅する時代」の相棒へ
- ツアークロスVのメリット3つ
- ツアークロスVのデメリット3つ
- 私見:ツアークロスVという「欲張りな一個」をどう捉えるか
- まとめ:ツアークロスVに向いている人・向いていない人
ツアークロスVのメリット3つ
① 3スタイルを工具なしで切り替えできる自由度
-
ポイント: ひさし+シールドのアドベンチャースタイル、ひさしを外したオンロード寄りスタイル、シールドを外してゴーグル前提のオフロードスタイル──この3パターンを、工具なしで切り替えられる構造になっています。 以前の世代ではネジを外したり、別パーツを用意したりと少し手間がありましたが、そこが大きく改善されていて、「今日はどんな走り方をするか」で気軽にスタイルを変えられるのは大きな魅力です。
② 安全性と快適性を両立した新しい帽体設計
-
ポイント: 帽体は、従来の“尖ったオフ寄り”の形状から、より丸く滑らかなフルフェイス寄りのフォルムに刷新されています。 シールドベースの位置を下げることで、衝撃を受けたときに“滑ってかわす”面積を増やす設計思想が取り入れられており、アライらしい「守るための丸さ」がしっかり反映されています。 そのうえで、内部のフィット感はカッチリしつつも頬の当たりは面で包むような優しさがあり、長時間のツーリングでも「締め付けられている」というより「支えられている」感覚に近い印象です。
③ ベンチレーションと空力性能の進化
-
ポイント: 額のダクト構造や口元の開口部が見直され、走行中の換気性能がかなり高められています。特に口元の通気は、息苦しさを感じやすい夏場や渋滞時に差が出る部分。 さらに、ひさしやリアスポイラーの形状も見直されていて、アドベンチャーヘルメットにありがちな「高速道路でひさしが風に煽られて首がしんどい」という悩みが軽減されています。100km/h前後でも安定感が高く、「ひさし付きなのにここまで落ち着くのか」と感じるレベルです。
ツアークロスVのデメリット3つ
① 価格はしっかり“プレミアムクラス”
-
ポイント: ソリッドカラーでも6万円台後半、グラフィックモデルでは7万円台という価格帯。 「ヘルメットは命を守るもの」と考えれば妥当とも言えますが、初めてアドベンチャー系ヘルメットを試してみたい人にとっては、気軽に手を出せる価格ではありません。 「これ1個で何役もこなす」と考えて元を取るタイプのヘルメットだと言えます。
② シールドやスタイル変更は“慣れ”が必要
-
ポイント: 工具なしでスタイル変更できるようになったとはいえ、シールドの脱着や、ひさしとの組み合わせ変更には多少コツがあります。 仕組み自体は合理的なのですが、「説明書を読まずに感覚でやる派」の人だと、最初は少し戸惑うかもしれません。 一度手順を身体で覚えてしまえば問題ないものの、「パッと見で直感的に分かる」レベルの簡単さではない、という印象です。
③ 重量感とボリュームはそれなりにある
-
ポイント: 安全性や剛性、スタイルの可変性を重視しているぶん、軽量特化のヘルメットと比べると、被ったときの“存在感”はしっかりあります。 ロングツーリングや高速走行では空力の良さが効いてくるので疲れにくさは確保されていますが、「とにかく軽さ最優先」という人には、やや重く感じられる可能性があります。 見た目もボリュームがあるので、コンパクトなフルフェイスに慣れていると、最初はミラーに映る自分の頭の“アドベンチャー感”にちょっと笑ってしまうかもしれません。
私見:ツアークロスVという「欲張りな一個」をどう捉えるか
ツアークロスVって、冷静に見るとかなり“欲張りなヘルメット”です。
-
オフも行きたい
-
林道もかじりたい
-
高速道路もガンガン走る
-
見た目もアドベンチャーっぽくキメたい
-
でも安全性は妥協したくない
このあたりの願望を、「じゃあ全部まとめて面倒見ますよ」と言ってきているのが、このモデルの立ち位置だと感じます。
面白いのは、その“全部やります宣言”が、単なる器用貧乏で終わっていないところです。 帽体の安全設計はアライらしく真面目で、ベンチレーションもかなり実用的。ひさし付きなのに高速でも安定していて、「アドベンチャー系だから仕方ないよね」と諦めていた部分を、きちんと詰めてきています。
一方で、完璧超人というわけでもありません。 価格はしっかり高いし、スタイル変更も最初はちょっと手こずるし、軽さだけを求める人には刺さらない。 でも、その「ちょっとクセがある感じ」が、逆に“道具としての愛着”につながりそうな雰囲気も持っています。
たとえば、週末に林道へ行く前のガレージで、 「今日はオフ寄りで行くか……よし、シールド外してゴーグル仕様にしよう」 なんて、ヘルメットを前にちょっとした“儀式”が生まれる。 その時間も含めて、バイクとの付き合い方が少し豊かになるような、そんなポジションのヘルメットだと思います。
結局のところ、ツアークロスVの魅力は「どこを走るか」よりも、「どこまで自分の遊び方を広げたいか」によって決まってくる気がします。 ヘルメットを“守るための道具”から、“遊びの幅を広げるスイッチ”に変えてくれる存在──それがこのモデルの一番おいしいところかもしれません。
そして、いろいろなスタイルを試したあとに気づくのは、 「結局、同じヘルメットとずっと旅してるな」という、ちょっとした相棒感だったりします。
まとめ:ツアークロスVに向いている人・向いていない人
最後に、感想をひと言でまとめるなら、
「バイクでやりたいことが多い人ほど、ハマるヘルメット」
という印象です。
-
向いていそうな人
-
アドベンチャー系やツアラー、オフ車など、複数のジャンルをまたいで楽しみたい人
-
「どうせ買うなら、長く付き合える一本がいい」と考えるタイプの人
-
道具に対して、多少のクセも含めて“付き合っていく”のが好きな人
-
-
あまり刺さらないかもしれない人
-
「とにかく軽さ最優先」「サーキット全振り」など、用途がかなり限定されている人
-
価格よりもコスパ一点勝負で選びたい人
-
スタイル変更などの“ひと手間”を楽しめない人
-
ツアークロスVは、単なる“多機能ヘルメット”ではなく、 「バイクとの付き合い方そのものを、ちょっとだけ欲張りにしてくるヘルメット」です。
もし、あなたの頭の中に 「オンもオフも、ツーリングも、ちょっと全部やってみたい」 という欲望が静かに住んでいるなら──
その声に一番ニヤリと応えてくるのが、ツアークロスVかもしれません。