デイトナ DT-02(D25031)を語る:仲間と走る時代の“ちょうどいいインカム”とは

はじめに

ツーリングの休憩中、誰かが必ずこう言います。「インカム、どれが“ちょうどいい”んだろうね」。 ハイエンドすぎる海外ブランドは財布に厳しいし、激安すぎるものは長距離ツーリングでの信頼性が不安。そんな空気の中で、しれっとテーブルに置かれるのが、デイトナのDT-02。今回取り上げるのは、そのワイヤーマイク仕様「D25031 DT-02」です。

 

バイク用品の世界も、ここ数年で一気に“つながる前提”になりました。ソロで走っていてもナビと音楽は当たり前、マスツーなら会話がないと逆に不安になるくらい。そんな時代に、最大8人同時通話・最大1500m通信・音楽と通話の同時利用というスペックを掲げて登場したのがDT-02。スペック表だけ見ると「お、だいぶ攻めてきたな?」という印象ですが、実際のところどうなのか――というあたりを、じっくり掘っていきます。

 

メリット

まず、このインカムの「いいところ」を3つに絞るなら、こんな感じになります。

1つ目の良さ:大人数ツーリングに本気で強い

DT-02同士なら最大8人同時通話に対応。従来モデルでは6人あたりが上限だったところを、しっかり“もう一歩”踏み込んできた印象です。 マスツーリングでありがちな「誰か一人だけ声が届かない」「最後尾の人が孤立する」といった状況をかなり減らせる構成で、しかもペアリングも短時間で済むよう設計されています。大人数で走ることが多い人にとっては、ここだけでも候補に入れる価値があるレベルです。

2つ目の良さ:通信の安定感と“同時進行”の強さ

最大通信距離は1対1接続時で約1500m。前モデルから約1.5倍伸びていて、隊列が少し伸びても会話が途切れにくい仕様になっています。 さらに、Qualcomm社製QCC5181チップを2枚搭載し、通話・音楽・ナビといった複数の音声ソースを同時に扱えるのがDT-02の大きな特徴。バックグラウンドミュージック機能で、会話しながら小さめの音量で音楽を流す、といった使い方も可能です。 「どれか一つを諦める」のではなく、「全部同時に、しかもストレス少なく」という方向に振り切っているのが面白いところです。

3つ目の良さ:音質・操作性・アプリ連携のバランス

音質は中高音がクリアで、ナビ音声や会話が聞き取りやすい方向にチューニングされています。風切り音にも強く、低遅延で会話のラグも少ないという評価が多く見られます。 操作性も、グローブをしたままでも扱いやすいボタン配置とされていて、「直感的に操作できる」という声が目立ちます。さらに専用アプリからイコライザー調整やアップデートが簡単に行えるため、音の好みや使い勝手を自分のスタイルに寄せていけるのもポイントです。 IP67相当の防水性能や、12時間以上の連続使用時間といった“ツーリングの現実”に寄り添ったスペックも、地味に効いてきます。

 

デメリット

一方で、「ここはちょっと気になるな」というポイントも、きちんと存在します。こちらも3つにまとめてみます。

1つ目の気になる点:価格は“安くはない”ゾーン

実売価格はおおよそ2万5千〜3万円台。機能を考えれば妥当、むしろコスパが良いという見方もできますが、「とりあえず安くインカムを試したい」という層からすると、ややハードルのある価格帯です。 「最初の一台」として買うには少し勇気がいるけれど、「ちゃんとした一台が欲しい」と思ったタイミングなら候補に入ってくる、そんなポジションと言えそうです。

2つ目の気になる点:取り付け周りの自由度

DT-02はクリップマウント非対応で、ヘルメットへの取り付けは両面テープベースが基本になります。 これ自体は固定力という意味では安心感がありますが、「ヘルメットを複数使い分けたい」「脱着を頻繁にしたい」という人にとっては、やや不便に感じる可能性があります。ヘルメット側の形状によっては、貼り付け位置の工夫も必要になってきます。

3つ目の気になる点:多機能ゆえの“慣れ”が必要

通話・音楽・ナビ・アプリ連携・他社インカム接続など、できることが多いぶん、最初は操作や設定に戸惑う場面も出てきそうです。 専用アプリで設定できる項目も多く、「とりあえず繋がればOK」というライトユーザーには、少し情報量が多く感じられるかもしれません。逆に言えば、触れば触るほど自分好みに追い込める余地がある、とも言えます。

 

私見

ここまでを踏まえて、このDT-02というインカムを一言で表すなら、「ツーリング仲間が多い人ほど、真価が見えてくる道具」だと感じます。

最大8人同時通話・1500m通信・QCC5181チップ×2・バックグラウンドミュージック・専用アプリ・IP67防水・12時間以上の連続使用時間。こうして並べると、スペックの方向性がかなりはっきりしているのがわかります。 “とりあえず音が聞こえればいい”ではなく、“走りながらのコミュニケーション環境を整える”ことに全振りしている印象です。特に、会話と音楽とナビを同時に扱える設計は、長距離ツーリングやマスツーでこそ真価を発揮します。

一方で、価格はエントリークラスより一段上、取り付けはクリップ非対応、多機能ゆえに最初は少しだけ“仲良くなる時間”が必要。ここをどう捉えるかで、このインカムの評価は大きく変わってきそうです。

個人的な印象としては、「安さ」や「シンプルさ」ではなく、「ツーリングの時間そのものを濃くしたい人」に向けた一台。 ソロで走ることが多く、音楽もナビも最低限でいいなら、ここまでのスペックは要らないかもしれません。でも、仲間と走る時間が増えてきて、「あの時、ちゃんと話せてたらもっと楽しかったよな」と感じたことがあるなら、DT-02はその“もったいなさ”を埋めてくれる存在になり得ます。

そして何より、このインカムの面白いところは、「会話が続くほど、道も思い出も伸びていく」感覚を作ってくれるところ。 気づけば、目的地に着いた瞬間よりも、「あのトンネルの中で話してたくだらない会話」のほうが記憶に残っていたりする。DT-02は、そんな“どうでもいいけど、やたら愛おしい時間”を増やすための道具なのかもしれません。

 

まとめ

最後に、まとめとして。

D25031 DT-02は、スペックだけ見れば「ハイエンド寄りの真面目なインカム」です。 でも、その中身をよく見ていくと、「ツーリング仲間とどれだけ笑えるか」「どれだけ安心して走れるか」という、かなり人間くさい部分にフォーカスした設計になっているように感じます。

完璧な道具ではありません。価格は安くないし、取り付けや設定で少し悩む場面もあるでしょう。 それでも、「次のツーリングで、誰かの声がちゃんと聞こえること」に価値を感じるなら、このインカムは十分に検討する価値があります。

結局のところ、インカムって“音が出るガジェット”ではなく、“会話が続くきっかけ”なんですよね。 DT-02を選ぶかどうかは、「次のツーリングで、誰とどんな話をしたいか」を想像してみると、案外すんなり答えが出るのかもしれません。